デザインが変革するアメリカ大学教育 〜多様なデザイン留学の選択肢〜

   

このブログなどを通じて知ったのですが、大変嬉しいことに、私の通うTransdisciplinary Design Programの新年度の募集に、非デザイナーの日本人が複数人合格しているそうです。
デザインの考え方やスキルが、デザイナーに閉じたものではなく、あらゆる分野で変革を起こすものとして、徐々に日本社会に広まってきたのだと思います。

アメリカのMITやケロッグスクールなどのエンジニアリングやMBAで世界的に有名な大学にとって、デザインを教育カリキュラムに取り入れてることは、普通のこととなっています。しかしながら、デザイン海外留学については、ほとんど日本人に向けた情報がないのが実情です。今回のポストでは、デザイン留学に関心がある方に向けて、特にアメリカにおいてどんな選択肢があるのか、どんな特色があるのか、まとめてご紹介します。

学問分野を越境するデザイン

デザインとエンジニアリングの融合を中心に手がけているtakramが提唱している考え方に、BTCモデルがあります。これは、ビジネス(B)・テクノロジー(T)・クリエイティブ(C)の三要素を兼ね備えた人材や組織がイノベーションを起こすことができる、との考え方です。現在、経済産業省の研究会においても、人材育成や組織のあり方について、この考え方がテーマとして上がっています。

経済産業省 産業競争力とデザインを考える研究会 第四次産業革命とデザインの役割 より転載

デザイン・クリエイティブを取り入れているアメリカの大学

クリエイティブを教育に取り入れているアメリカの大学は、このBTCモデルに沿って整理することができます。さらに、BTCに加えて、デザインによる社会変革(Social Impact)をテーマにした学科が増えてきています。これは、ビジネスやテクノロジーの分野だけでなく、気候変動や世界的な貧富の差の拡大など、パブリックな問題こそに、イノベーションが求められてきているからだと思います。

それでは、BTCにS(Social Impact)を加えたモデルで、各大学を私見に基づいて整理しています。各大学ともに、基本的にはBTCS全ての融合が重要との立場をとっているとは思いますが、それぞれに、例えばビジネスカリキュラムがメインで、クリエイティブを教育にとりいれ始めた、といったような特色があります。

ビジネス+クリエイティブ融合

クリエイティブ側からのアプローチ

デザイン思考をカリキュラムのメインに据え、実際に物を作るプロトタイピングも盛んに行われている。

ビジネス側からのアプローチ

MBAの授業がメインで、デザイン思考の授業をイノベーションを起こすスキルとして教えている。

テクノロジー+クリエイティブ融合

クリエイティブ側からのアプローチ

実験的なコンセプトをデザインの発想で生み出し、エンジニアリングの力で実現することを目的としたプログラム。筆者がよく知らないだけで、パーソンズ以外ののアートスクールにもあると思います。

テクノロジー側からのアプローチ

世界最先端の技術を融合し、新しい社会的コンセプトを生み出しています。IDMはよりビジネス寄りで実践的、MediaLabは実験的なプログラムが多い印象

社会変革+クリエイティブ融合

クリエイティブ側からのアプローチ

私の通うTDをはじめ、デザイナーに限らず様々なバックグラウンドの学生が集まり、デザインを通じた社会変革へのアプローチを研究しています。

社会変革側からのアプローチ

公共政策系の学科にてデザイン思考を一部カリキュラムに取り入れる動きが出てきているようですが、おそらくまだあまり多くはなく今後増えていくと思います。上記NYUは、選択コースにデザイン思考のカリキュラムを導入しています。

まとめ

今回は、私が出願したり、話を聞いたアメリカ大学を、カテゴライズして紹介しました。
あくまで私のイメージのため、必ずしも正確ではないと思いますが、出願を考える際に自身が何に軸をもって勉強したいか考える上で、参考にしていただければと思います。

私の通うパーソンズ美術大学のTransdisciplinary Design プログラムの内容は、以下の記事で紹介していますので、是非合わせてご覧ください。

超(Trans)-学問(Disciplinary)デザインってなんだ?

 

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